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第6期科学技術イノベーション基本計画によって大学など研究組織の任期制は廃止に向かうはず。

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はじめに

2021年3月26日に、第6期科学技術イノベーション基本計画が閣議決定された。

この10ページ目に以下のような文章がある。

また、研究力については、ノーベル賞受賞者は多数輩出しているものの、論文の量・質ともに国際的地位の 低下傾向が継続している。特に研究力を支える若手研究者を取り巻く環境を見ると、任期付きポストの増加や 研究に専念できる時間の減少など、引き続き厳しい状況が続いている。

注目したのは「任期付きポストの増加や 研究に専念できる時間の減少など、引き続き厳しい状況が続いている」というところだ。

はっきりそう書いているわけではないが、「研究力の国際的地位の低下傾向が継続しており、これには、任期付きポストの増加という厳しい状況が影響している」という意味に読み取れる。

任期制は、行政主導で、大学など研究組織に導入されたのではなかったのか?なぜ政府が、人ごとのように言うのだろうか?

どういう経緯でこのような表現になるのだろうか?

これは、「大学など研究組織が任期制が導入できるように、法整備などをしっかりやった上で、任期制の導入を検討するよう大学などに促しはしたが、任期制の導入を決めたのはあくまでも大学などであって、行政ではない」。

と考えると辻褄が合う。

「大学などは、任期制を導入したくてしたわけではなく、運営費交付金削減などをおそれて、行政が促した任期制を、自らの判断で導入した。

その後も、任期付ポストを任期なしポストに変換したくても、行政による運営費交付金削減などをおそれて、躊躇してきた。」と私は思っている。

第6期科学技術イノベーション基本計画が発するメッセージ

第6期科学技術イノベーション基本計画は大学などに向けたメッセージであると考えることができる。

つまり「大学などが、任期付ポストを任期なしポストに変換したとしても、行政としては、運営費交付金削減などをすることはない。日本の研究力の低下傾向が食い止められるように、安心して各大学で対応をしてほしい」というメッセージだ。

このメッセージによって、大学など研究組織は、独自の考えで、任期制ポストをどうするか、自由裁量で考えることができるようになった。

このメッセージを発しておいて、任期付きポストを減らした大学に対して、任期付きポスト削減を理由にして運営費交付金を削減することはできないだろう。

このメッセージにみんな気がついているのだろうか?

問題は、このメッセージについて、大学運営関係者、メディアなどが気が付いているかと言うことだ。

広く知られることにならなければ、改善されないだろう。

とはいえ

ただし任期を外すのは慎重に行う必要があると思われる。

何故かと言うと、任期制だから、という理由できちんと人事をしてこなかった背景があるに違いないからだ。

ある程度(例えば平均以上)の研究能力があると認められた場合に、どんどん任期を外す、というのが今後の主流になると筆者は予想している。

このような方針を、明示的に掲げない大学には、人が集まらなくなり、衰退していくかもしれない。